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鋼(はがね)のお話
鑿(のみ)や鉋(かんな)に使われている鋼といえば日本鋼ですが、
意外に硬くなくJIS規格の鋼の合金工具鋼ぐらいの硬さです。
日本鋼の場合は砥石を使って人力で研ぐことを前提にしているためあまり硬い鋼を使うことができません。
今は機械用の作業が全盛の時代ですので、機械用の鋼のお話を致します。

①炭素工具鋼(SK材)
 最も安く柔らかい鋼です。多少の靭性(金属の柔軟性)があって鑢(やすり)で研げるのが特徴です。
 代表的のものはカッターナイフの刃がそのSK材です。
②合金工具鋼(SKS材)
炭素工具鋼に非鉄金属を加えてさらに硬くした鋼です。鑢で研ぐには少し難しいと思います。
 代表的なものはチップのついていない昔からの草刈刃そのものがSKS材です。
③高速度工具鋼(SKH材)
 別称のハイスピードスチールを略して”ハイス”と呼ばれています。
 高速度の由来は金属の旋盤の高速回転の高温でも使える刃物という所から来ているようです。
 鉄工ドリルや電気カンナの刃物の先部分などに使用されています。もちろん鑢で削れません。
 研ぐ時はグラインダ砥石で研磨します。
④粉末合金(超硬合金)
 俗にチップと呼ばれ、鑢はおろか砥石でも研げないカチカチの合金です。
 なので研磨する時は地球上で最も硬いダイヤモンドで研磨します。
 硬い分、靭性が全くないので非常に欠けやすく大きな負荷は掛けられません。
 チップソーの刃先に代表されるように、大工さんには非常に身近な鋼となっています。

硬い鋼ほど価格はそれなりに高くなりますし、それを加工するコストも掛かるため、刃物の製品価格に反映します。
また硬い刃物は無垢(その材質のみ)で製作すると靭性がないため刃先ではなく刃元で破損しやすく、
鑿や鉋と同様「付け鋼(つけはがね)」と呼ばれる地金に刃先のみ鋼をつける方法で製作することが一般です。

よく「切れる刃物」とか「刃物の調子がいい」といった表現をすることがよくありますが、
この二つは同じ意味だと思います。
この言葉を聞くとその刃物の品質が良いと思いがちですが、いつもそうだとはとは限らないようです。
この表現をする時、その刃物が自分の行う作業に対して合っていたり、予想以上にいい効果が現れた時に、
自発的に出る言葉ではないでしょうか。
同じ刃物や道具を販売したのに、同じ職種の人に同じ商品を買って頂いても、
人によって「この前買ったヤツ調子良かった」「調子が悪い」「よく切れる」「ぜんぜん切れん」など
評価が各々違うのに初めは何でだろう?と、思っていましたが、
最近は悪い評価があったときは、お客様に合わないものを売ってしまったと思うようになりました。
店頭販売はインターネット販売との違いはこういうところで差別化を図らなければいけないと思います。
いい商品を売るのは当然ですが、それよりもお客様の作業内容を認知した上で、その作業にあった商品を販売して
「調子良かったから、また買うよ。」
という仕事を目指しています。
”ただ売るだけではない。”販売店を追求します。