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先週の解答(ヤスリより狭い目を摺れ)

先週の問題は難しすぎて申し訳ございませんでした。
今回はじっくり説明することに致します。
まずは先週の問題になりますが、父の言った「ヤスリより狭い目を摺れ。」の意味について
1.どうやったらヤスリより狭い目が摺れるのでしょうか?
2.また、この言葉の裏にある意味は何でしょう?
3.それから出来た”ある鋸”とは一体どんな鋸だったでしょうか?
1については先日解説しましたが、本日は図解いたします。
とりあえず、実際に尺の両刃鋸をセットします。

本来は天端(刃の先端)を平らに潰して、顎から摺りますが、写真が見やすいように背から摺ります。


ヤスリを無駄なく使うために端から端までゆっくりを研ぎ面に強く押し付けながらゆっくり進めます。
早く進めると、ヤスリが滑ってしまい、効率よく鋸の刃が削れません。(このような場合は「摺る」と言わず「擦る」と言います。)


これが背を左から5本摺った写真になります。
よく見ると、目底が光っているのが分かると思います。
父の言った「ヤスリより狭い目を摺れ。」と言う意味は下図のように

ヤスリで刃が反り返るほど強く押し込んだまま摺り込むと、力を抜いた時に刃が戻って
目底の部分がヤスリの小刃(一番薄い部分)が挟まれるほどの仕事をしろと言う意味なんです。
でも、見習いは中刈(ちゅうがり=アサリ部分まで刃を落として、刃の長さの半分摺りこむ作業)や
切替(きりかえ=刃をすべて落として一から刃を作る作業)がほとんどで、こんな作業を一日していたら
筋力が落ちて、摺り込むはずの作業も加圧不十分でヤスリが「スッ」と、すべって擦(こす)る状態になってしまします。
父も音ですぐに分かりますので
「汗が出とるか!」
と、お叱りを受けます。
と、言うことで2の”また、この言葉の裏にある意味は何でしょう?”は
ヤスリが挟まれるくらい、強い加圧を掛けながら
「ジ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」(実際は1秒くらい)
と摺り込めと言う意味がこもっています。


3については、通常の本職鋸ではありえないんですが、素人用の安物の鋸ですと刃が甘い(焼きが甘い=軟らかい)ため
摺り込む時にヤスリが挟まれることがないことはないですが、
素人用の鋸は平均厚いため、それほどヤスリが挟まれるような現象は起こりません。
それよりも、かつて悪徳の行商が粗悪品の両刃鋸を大工さんの作業場に出向いておりました。
その行商は材質の悪い材料でいかにも本職用のような作りにするため、薄く作り柄も入れず、目立ても不十分な鋸を
「4本セット(尺一・尺・9寸・8寸)で40000円を今日は2万円にしておくがどうだ。」
「高いから要らん。」
「だったら10000円にしておく。」
こんな手口で使えない粗悪品を販売しているだけならまだしも
「トシカネに卸しておる。」(それは嘘です。完全に詐欺ですね。)
お客様は直接買ったから得したような気がしていますが、そのままでは切れないので、
当店に目立てを持ち込んできます。
安物は見れば分かります。
腰は弱いし、弾くと音が低い。
でも、摺り込むのは楽である。
あまり勢いよく摺り込むとヤスリが抜けず、たまにヤスリを取られて、小刃が欠けてしまいます。(反省)


長くなりましたが、こんなこともありましたと流してください。


明日も問題です。
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