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刃持ちの悪い底切りビット

昨日の続きであるが、通常の大入用の平ビットに比べ、底切りビットは極端に刃持ちが悪いと言われる。

平ビットの違いは
1.削る材料の密度が違う。
平ビットは大抵米松を削る。
それに対して、底切りビットは乾燥した檜を削る。
明らかに密度が違うために、刃持ちが違ってくる。
以前、胴差を長い距離で持ちっぱなしにするために、フェノール系の集成材を使って刻んでいた大工さんのところに行った。
その大工さんは
「この集成材の黒いところを削ると火花が出て刃が一発で切れなくなる。」
やっぱり、いくら超硬と言えども、硬い材料には無理があるようである。


2.周速が違う。
底切りビットは底を掘ることができるところに価値がある。
しかし、外周部分と違い底部分(特に中心部分)は外周と同じ回転だが、1回転で動いている速度が違うために
外周と同じ速さではない。
中心部分がゆっくりしか切れないために底の外周付近は超低速で穿孔する。
すると、切込み量(削りくずの厚み)を稼げれない。
ここで難しい話をするが木でも鉄でもある一定以上の切込み量がないと削れない。
刃先が相当鋭利であれば、削ろう会で優勝できるような削りくずを出すことができるが、それは”ほんの一時”。
ちょっと使えば刃先は僅かながら摩耗する。
刃持ちがいいものは、少々刃先が摩耗しても使えるものだと思っている。
技秀のカンナ刃がいい例だと思う。
刃先が摩耗しても鉋屑を丸く排出できる裏構造があるからこそ逆目が出にくい。
話がかなり大回りしたが、底切りビットの中心部の穿孔速度に合わせるために外周が削りくずを出せないだけでなく
刃先が加工材の表面を滑り続けているからより摩耗すると思われる。


この二つの理由から底切りビットの刃持ちが悪いのではないかと思っている。


ちなみに檜の柱に角のみを使う場合に刃持ちがいいのは、角のみは高トルク低回転で開けるために
刃先が摩耗しても力で掘っていくためだと思う。
低回転高トルクで開けると木の繊維を切断した部分が思いっきりささくれるが、
先に箱刃が穿孔しているので、ささくれないだけだと思う。


結論として柱に胴差のホゾ穴を開けるときは先に角のみまたは電気ドリルでホゾ先だけ開けて、
その穴から底切りビットで削ったほうが、はるかに刃持ちがよく作業も早いと言われる。


でも、それだったら、底切りの必要性が・・・。


本日は当方の薀蓄にお付き合い頂き感謝しております。明日は一日遅れの問題です。