早速ですが、先週の解答を致します。
先週の問題は6枚お預かりしたチップソーのうち欠けても歪んでもないのに研磨をお断りした理由でした。
それはチップと台金を溶着するときに使うロウ付けに問題があったからでした。
チップの素材は合金なんですが主剤はタングステンで台金の主剤は鉄。
タングステンは硬すぎるために溶接のような高温にすると
ガラスのコンプに熱湯を入れたのと同じで
膨張率の差に対応できず割れてしまいます。
そのために低温のロウ付け(それでも600~900度)で
はんだ付けのように溶着してあります。
チップソーが使用中に摩擦係数が大きすぎると
ロウ付けが溶けだすのではないかと思われ(確認していません)
ロウ付けが溶けかけた状態でチップが押されるわけですから
両端にロウ付けが飛び出すことが考えられます。
但しチップソーが鋸道の中を進んでいるために大きく飛び出ずに
アサリ幅ギリギリまで出るか、あるいはやや飛び出るくらいになると思われます。
やや飛び出たロウ付けはさらに切断作業を続けることによって
鋸道の中の木口で削られ、結局アサリギリギリのところで落ち着くものと思われます。
この状態で切れることは切れますが新品の時よりも接触抵抗が大きいために
発熱量が大きく、刃がブレやすい「切れない!」と思われることになります。
これを研磨すると側面に勾配が付いているため
さらに軋むことになり、結論として研磨しても切れないと言うことで
今回は研磨をお断りしました。
チップソーで刃先が長時間熱くなり続け、切れなくなったチップソーがありましたら
一度ご確認願います。