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一度だけ弱みを見せた父

昨日、闘病中の小林麻央さんがお亡くなりになられました。


この訃報を知って、今から26年前の話を思い出しました。
父の妹が52歳で亡くなられたときの話です。
死因は小林麻央さんと同じ乳がんでした。
発覚したのは亡くなられる5年前。
突然、その叔母から父に電話がかかってきて
「兄さん、乳がんになっちゃった。でも抗がん剤で治った人がいるから私もそれで直す。」
「お前まだ子供が一人前になっていないから、長生きしないといけない。切れ(切除しろ)!」
この兄弟の母親も肺がんで亡くなっている。
叔母の子供はドサ回りの劇団員。
父は電話では思いが伝えられないので、車を1時間飛ばして説得に行く。
しかし、叔母の考えは変わらない。


それから1年後、
再び、叔母から父に電話が来た。
「兄さん、やっぱり兄さんの言うとおりにする。」
「そうか。がんばれよ。」
電話を切ってから、父が
「この一年が命取りにならなければいいが・・・。」
とつぶやいていた。


手術が終わってから数か月後、叔母に会った。
かつらを付けていたけれど、以前と変わらず明るく美人な叔母であった。
一緒にいた母が
「乳が片方無くても良いじゃん。私なんか最初から両方とも無いから。」
叔母は、グラビアアイドル並みの体形なので、素直に手術が受けられなかったのかもしれない。


しかし4年後、帰らぬ人となった。
葬儀が終わって家に帰ると、父が目を真っ赤にして
「俺が5年前に妹にもっと強いことを言って、首に縄をかけてでも手術させないといけなかったよな?」
「違うよ。父さんが、強引に説得したから1年後に手術して合計5年生きれたんだから(説得に)行って良かったんだよ。」
「(泣きながら)そうだよな・・・。」


人は生まれてくることが運命ならば、亡くなるときも運命。
改めて故人のご冥福をお祈りいたします。