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今昔物語(機械釘の変遷その3)

通称バーブドと呼ばれる業界初のマガジンヒップアップタイプの日立VH500も
現在主流の針金斜め連結釘によって、市場を奪い返されます。
最初の機種はMAXのCN58/NC50V1でした。※MAXは"/"の後の品番は使える釘を表記します。
今では考えられませんが当時の定価が98000円。
決して兼用機でもありませんし、当時の相場は値引きして90000円前後でした。
大工さんの人工(にんく)が高いわけではありませんし(当時は1日13000円くらいでした。)
コンプレッサーは圧力スイッチは付いていないタイプで1/2馬力でも10万円以上しました。
CN58は重量が2.2kg。現在の高圧90mm機とほぼ同じ。
でも、頑丈なボディに耐久性のある内部構造でした。
当時は釘打機を使うために最低でも20万円は掛かったので、庶民的な道具とは言えませんでした。
またこの頃は常傭で働く大工さんがほとんどなので、機械を買っても機械代が浮かない。
そのため、一般的な道具にはなっていませんでした。


ここでMAX信者と言われるスタートが始まります。
MAXが釘打機を庶民的な機械にするため思い切った手を打ちました。
この時すでに過半数のシェアを取っていたにも関わらず、当時としてはビックリするような手を打ちます。
これが”LPセット”企画でした。(当時は意味が分かりませんでしたが、たぶんロープライスの略でしょうね。)
定価98000円のCN58をモデルチェンジして1割重量を軽くして定価を58000円に値下げ。
さらに新型コンプレッサーAK415Sを10万円を大きく切り定価69000円(ツッコミなしでお願いします。)
今まで20万円した釘打セットが値引きして11万円程度で購入できるようになりました。
このセットのお陰で全国的にコンプレッサーと釘打機が普及したのは言うまでもないでしょう。
MAXは、その後コンプレッサーはAK615シリーズ・AK715シリーズ・AK7000シリーズとヒット作を飛ばし続け、
釘打機もCN540・CN550シリーズ・CN630やタッカTA34シリーズの連続ヒットを飛ばし、
釘打機の代名詞となり、日本中にMAX信者を増やし続けました。


しかしシェアが70%を超えると業界では独占状態のため、その後の売り上げ増に無理が出始めます。
そのため、売上よりも利益を追求することを優先し始めます。
これがお客様のためであれば問題ありませんが、開発課に
「新型の釘打機を発売する時は新型の釘が売れるように釘の規格を変えなさい。」
これは新型の釘打機が売れても、市販の釘が使えるタイプでは高い純正の釘を買っていただけないので
必ず釘を変えて、釘打機を買っていただいたら、その釘も純正を使うように仕向けるためである。
結果として、これがMAX信者崩壊に繋がってしまった。


ものづくりの原点はお客様のためになるものを作ることである。
決して利益を優先してはならない。
企業にとって利益は必要なものであるが結果ではなく、過程であって欲しい。
このことは当店にのような同業者にも職人さんにも当てはまると思います。


長い薀蓄にお付き合い下さい誠にありがとうございました。
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