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両刃鋸 その1

両刃鋸と言ったら、数十年前なら大工道具の代名詞のようなものでした。

元々先代の父がこの業界に入るきっかけとなったのも、この両刃鋸なんです。
今から60年前父が就職をする時すでに親戚の自転車屋へ修行が決まっていまして、
片親で頑張っていた父の母親である私の祖母が古着の行商先の大工さんのところで、
「大工さん、ウチの息子就職が決まったよ。」
「どこに行くんだ。」
「兄の自転車屋に奉公しにいくよ。」
「なんだ自転車屋か。そんなトコへ行くならもっと良いトコがあるぞ。」
「それってどこ?」
「目立て屋。鋸の研ぎ屋のこと。今までは大工が自分で目立てをしてたけど、能率が悪いので、これからは専門の目立て屋に出すから仕事は多いし、自分の家でできるし、技術さえあれば簡単に始めれる商売だから、どうだ!」
「分かった。じゃ兄に断ってくる。」
こんな感じで急遽就職先が岡崎市の刃物鍛冶屋に変わってしまいました。
しかし2年後、目立て仕事が片手間で専門ではなかったので、奉公先を名古屋の目立て専門職に代え(一昼夜玄関先で粘って入れて頂いたようですが・・・)
その4年後、資金も資産もない私の祖母が、父の独立のために苦肉の策で、子供のない家主のところへ養子縁組して開業先を用意してくれました。
(当然4年間ですから、いわゆる年明け前なのでその親方は不服です。)
その養父が昔やっていたダンスホールの”喜利館”から一文字と父の付けたかった文字の”兼”を付けて利兼商店として開業しました。
父は開業当時は寝る間も惜しんで仕事に励み、何とか商売が起動に乗ったころ、やっと親方に弟子扱いされたようです。
そこまで来るにあたり、数万丁の両刃鋸の目立てをしたことでしょう。
だから、私がこの業界でやってこれたのも、この両刃鋸のおかげといっても過言ではないと思います。
目立ての工程は(横目普通目立ての場合)
1.左右のアサリを出す
2.天刃をつぶす。(刃の高さを揃えるため)
3.左右の背(木を切るのと関係ない方)を摺る
4.左右のアゴ(背の反対側)を摺る
5.天刃をあと一掛けでなくなるところまで上目を摺る
6.天刃を最後の一掛けで刃を付ける(こうしないと刃の高さが揃わない)
7.ひずみがあればそれを抜いて、油を拭いて新聞紙で二重に包む
こんな感じでしょうか。
続きは明日
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