PVアクセスランキング にほんブログ村

去る者追わず

先月、20年以上常傭で勤めていた40代の大工さんが棟梁の元を離れました。
棟梁は個人経営ながらも直営工事オンリーで頑張ってこられた方でした。
今から20数年前にその棟梁が
「間に合う職人が辞めちゃったので、代わりの若い衆がおらんか?」
と言うことで、紹介させていただいた大工さんでした。
長い間、勤めていただきましたが、後継者の息子さんと馬が合わず、別のところに移籍されたようです。
一昨日その棟梁のところに集金に行ったときに棟梁の奥さんから
「○○君(辞めた大工さん)元気でやってる?」
「頑張って仕事していますよ。」
「ウチなら道具はいらないけど、ほかに行くと道具がたくさんいるから大変だけど大丈夫?」
「出世払いのつもりで買っていただいているので、ウチも大変だけど何とかなるでしょう。」
「それならいいけど・・・。」
どうして辞めたのか?分かっているのかどうか定かではありませんが、長く勤めていただいたから、
棟梁側としては、お疲れ様と言ったところでしょう。
どんな人にもそれぞれの人生がありますから、去る者を追うことはできません。


帰社後、別の棟梁から電話が
「トシカネさん、どっか職人居らんか?」
ここの棟梁は直営専門で地域で一番奮闘されている方ですが、先日一人職人さんが辞められて、臨時で入った方が今週負傷退場中。
臨時で入った職人さんが入る直前に手の空いている年配大工さんを紹介しましたが、
その時は今回負傷退場中の大工さんが入ったので断られましたが、今回は採用となりまして、
今回は事情が違い、生え抜きの年明け直前の若い子が突然の退職願があったとのこと。
実はこの子も自分の紹介でしたので、少し責任がございます。
採用前に年明け後も継続して勤めていただくとこを希望されていて、
入門時に大工さんでもある親と一緒に来て、年明け後も、そのまま使っていただくことを三者確認していたはずなのに。
でも、それから4年経過して、考え方が変わったのか?特別な事情があったのか?


人それぞれ生き方があります。
使っていただくときは、相手側の承諾が必要ですが、辞めるときは、自由であります。
辞めて行って、親方が弟子として認めるか?これは親方に決定権があると思います。
でも辞めた子は、親方と呼べないとしても、お世話になったことを思ってくれていると思います。


そういえば、父も同じでした。
父はその筋では名の知れた腕のいい目立職人のところで修行していました。
あと1年で年明け予定だったんですが、父は早く独立したくて1年早く独立してしまいました。
もちろん、悪いことは承知だったようです。
のちに父は後悔していました。
理由は早く独立したために、仕事は中途半端でお客様に何度も叱られて、何度もやり直しをさせられたそうです。
親方は、もちろん弟子としては認めませんでした。
それでも、盆と正月にはお土産を持って認めてくれない親方のところに5年ほど行っていたようですが、
不服な親方は口も利いてくれなかったようです。
さすがに5年も口を利いてくれないと、行きづらく、しばらく疎遠になったようですが、
父も創業10年くらいして何とか安定した商売もできるようになり、親方もその噂を耳にしていたようで、
同じ目立ヤスリ屋の営業マンが
「たまには親方のところに行ってあげてください。」
と言われて、口を利いてくれない親方の元に行ったら、親方が
「よう来たな。上がってこい。お茶を出せ!頑張っておるようだな。仕事はどうだ。・・・」
口を利いてくれなかった10年分語り続けたようです。
金銭の問題ではなく、親方に自慢できるような弟子になることが本当の親方孝行かもしれません。
今度は自分の番です。頑張ります!