今から50年くらい前の住宅は基本和室(もちろん真壁)で
たまに洋室(今は死語ですね)くらいの感覚でしたが
今は和室なんて小さな住宅なら作らないのが普通。
田舎の本家(ほんや=跡継ぎの家)でも2軒に1軒くらいしか和室を作らず
作っても二間続きはない時代。
昔は法事や葬儀はもちろんであるが結婚式も本家で行っていたので
本家は北出付の三間続きが普通だった。
そんなご時世だったので、鴨居も敷居も大工さんが作るのは当たり前。
今から60年くらい前にミゾキリが発売されたときは
下働きの大工さんが泣いて喜んだらしい。
さすがにこの時代は物心つく前のお話ですので泣いて喜んでいた方のお話ですが
その方は、ほぼ鬼籍か引退組なので今の若い方は知らないと思います。
ミゾキリができる前は敷居のように浅い溝の場合、
底取り鉋に毛引きのガイドのついた鉋で溝を突いていましたが
鴨居は深さが深いので太鼓鋸(両刃で刃のラインが太鼓状に膨らんだもの)の縦挽きで
毛引きの凹みに沿って縦挽きしてから溝を鑿で斫ってから底取りと脇取りを掛けていたらしく
素材から木取ると1日に1~2本しかできないとか。
ミゾキリを使えば鴨居を突くだけなら突いている時間よりも
そのゴミを掃除する時間の方が長いでしょう。
それだけにミゾキリの出現した時代は電気カンナよりも喜ばれたようでした。
つづく